10万年より若い火成岩のカリウム-アルゴン年代決定を行うためには大気のアルゴン同位体比に近い試料中のアルゴン同位体比を厳密に決定することが最も大切である。このための高感度気体用質量分析計を製作することが今年の最大課題であった。そこで他大学で実際に作動している従来の気体用質量分析計の精度・感度等の特性を充分調査参考にして設計にあたった。現在、備品類や部品がようやくそろって質量分析計の組上げ段階で、真空テスト、焼き出しテスト、ガス精製系の温度計測のテスト等を繰り返している。また、ガス精製系に従来は活性炭がつかわれていたが、あまりきれいな状態に保持することが難しい点や大気に戻した時に燃焼する危険性があるため、新材料をつかうことを検討しこのテストも行った。質量分析計の中心部となるイオン源およびコレクター部の製作もほぼ完成しており、上記のテストが全て終了しだい、分析管の中に組みいれてイオンビームの安定性、イオン源の感度・精度などの計測を行う予定である。 これと並行して、質量分析計内でのイオンの径路を計算機でシミュレーションするためのプログラムを開発した。このプログラムは、任意の磁石の形・大きさ・イオン源の位置などからイオンビームの軌道を自動的に作図してくれるもので、質量分析計の設計・調整にも大変有効である。この計算シミュレーションによれば、イオン源からのイオンビームの集束状況などに関して特に問題点はなく、設計どおりに作動するものと期待できる。
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