研究概要 |
固体試料中の同位体比を, 常時3200程度の高質量分解能, ダイナミックレンジ5桁以上の高感度かつ測定精度±0.5%程度の高精度で測定することをねらいとして製作しているイオン顕微鏡の分析部としての極低バックグラウンド二重収束型質量分析計を試作することとし, 松田(1983)のパソコンを用いた質量分析計イオン軌道計算プログラムにより, 電場偏向角75度, 半径40cm, 磁場偏向角90度, 半径20cmとすれば, 検出部スリット100μmのとき質量分解能3400となるという結果を得た. これに基づいて, 電磁石, 分析管, 電場電極および電場容器の設計・製作を行なった. 分析管については, ベークアウトをしない状態で真空排気テストを行なった結果, 約1×10^<-7>Torrの到達真空度が得られている. 排気系統制御用の回路部分の製作については, 1系統分完了し, 正常な動作が確認できた. 回路製作には将来のパソコンによる自動制御を考慮し, 十分対応できるよう各部ともリレーを介した圧空作動方式を採用した. また, 短時間ではあるが, テープヒーターを用いて分析管をベークアウトしながら排気を行ない, 分析管だけならさらに到達真空度が上述よりも1桁程度高真空になることが確認できた. 電磁石については, ポールピース間に発生する磁場強度測定を行ない, 励磁電流約5.5Aで, 磁束密度5000ガウスが得られることがわかった. したがって, この電磁石を用いることにより, イオン加速電圧2kVのとき, 質量数250までの検出が可能である. 今後, イオン源, 試料容器, 試料導入部を作製し, 本質量分析計のヘッドに付加することによりイオン顕微鏡を完成させ, 高精度, 高感度局所同位体比測定を試みる計画である.
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