申請者達は結晶内原子、不純物原子、原子空孔等の動きを、直接原子レベルで観察しうる原子直視分析電子顕微鏡を開発し、原子の動きを実時間でTVや16mm映画に記録することに成功した。しかしこれらは、いずれも室温で強烈な電子線を照射してなされたため、試料温度を正確に制御したものではない。そこで本研究においては、試料内原子の挙動を、制御された温度のもとで観察しうる試料低温観察装置を試作することを目的とし、その第1段階として、可能な限り高分解能で、極低温で観察しうる装置をつくる。この装置を大阪大学原子直視分析電子顕微鏡に取付けることにより、液体ヘリウムを用いて、30K以下の温度に冷却しつつ、25Å以上の分解能で観察の行えるようにする。以上の目的のもとに、初年度、以下の研究を行った。 1.装置は岡山理科大学、大阪大学および日本電子(株)の協力のもとに検討しつつ設計して製作された。 2.10月中旬には、30Kに冷却しつつ25Åの分解能をもつ装置が試作できた。 3.これの性能を向上されるよう、試料室部を更に冷却させるよう改良した。 4.このようにして製作された試作装置は1月24日に納入され、20Kで25Åの分解能をもつことが確認された。 以上により初年度の目標が達成されたことがわかる。次年度においては、これを用いて、照射損傷過程や不純物原子の挙動に基づく現象、超伝導材料等の動的観察が可能となるようにする。これには、照射電子量を低下させても高分解能観察を可能とすることと、低温試料ホルダーの分解能を更に向上させる必要がある。
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