研究概要 |
既に開発していた点照射方式顕微ラマン分光装置を改良し半導体材料の結晶性評価を行なうのが主な目的で、得られた成果は次のようなものである。 (【i】)光学撮像検出器を用い精密微動X-Yステージを導入した走査型ラマン顕微鏡を試作した。これにより二次元像の測定時間は光電子増倍管による点照射方式に較べ1/10に減少できた。この装置は再限性・安定性ともに優れていることが示され、リアルタイム画像処理によりラマン強度、ラマンピーク波数、ラマンバンド幅の二次元像が1μmの空間分解能で得られた。 (【ii】)散乱光側にステッピングモーターによる微小回転検光子を導入し、入射光側の偏光子の直交する二つの偏光方向に対しそれぞれ検光子を180度に亘って微小回転できるようにした。このようにして得られたラマン強度を計算式による強度と一致させるようにパラメーターを調整することにより、シリコンの結晶方位を決定できることを示した。レーザーアニールしたSOI(Silicon on Iusulator)に対し±2°の精度で各微小部分の結晶方位を決定できた。 (【iii】)小型クライオジェニ冷却器を用いて80K〜300Kの温度領域の測定ができるようにして、GaP発光ダイオードの動作時の温度分布などを調べた。 (【iv】)レーザーアニールしたポリシリコン層の深さ方向の結晶性の評価を角度研磨した試料について行った。各微小部分のラマンバンドの形状と強度を解析することにより、固相エピタキシーで再結晶したポリシリコン層内の残留歪と欠陥の分布を決めた。 (【v】)イオン注入損傷の顕微ラマン分光による評価のため、【Au^(++)】,【Si^(++)】または【Be^(++)】をイオン注入したシリコン試料について注入部と非注入部のラマンバンド強度を測定した。その結果損傷が検出される最小のドーズ量は、【Au^(++)】:9×【10^(11)】ions/【cm^2】,【Si^(++)】:7.5×【10^(12)】ions/【cm^2】,【Be^(++)】:7.5x【10^(13)】ions/【cm^2】であることが示された。
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