研究概要 |
1.共鳴フオークト効果による極微量元素検出装置の試作 レーザー共鳴フオークト効果を用いて微量元素を検出する装置を試作し性能を評価した。色素レーザーは、波長590nmにおいてスペクトル線幅5GHz,出力0.01μJ/パルス,ピーク強度1Wであった。このレーザー光を、光路長8mmのプロパン・空気炎中に通し、火焔中で原子化されたナトリウム原子による共鳴フオークト効果を測定した。印加磁場は0.8Tに設定した。パルス毎のレーザー光強度変動を安定化するために、光検出系に、BOXCAR積分器,およびコンピューターによる信号処理装置を用いバックグラウンド強度変動10%以下に達した。この値は信号処理を行わない場合に比べて約1桁変動率が改善されているが、信号処理系を高性能化すれば更に1桁以上の5/N改善が期待できる。 2.原子吸光法との性能比較 同一装置,同一設定条件において、原子吸光法との検出感度の比較を行った。入射レーザー光の橢円率および検光子の方位角を最適化することにより、Na:【D_2】線において、共鳴フオークト効果によるNa原子検出下限として約1×【10^8】【Cm^(-3)】の値が得られた。この検出下限は原子吸光法に比べて200倍の感度改善になつている。 3.総合評価 今回の試験研究の結果,共鳴フオークト効果分光法が微量元素の検出に有効な高感度分光法であることが立証された。現在もっとも高感度と見なされているレーザー励起原子蛍光法とも対抗しうる感度であり、測定時間はフオークト効果法の方が短縮できる。共存原子分子の干渉効果については今後の研究を待たねばならないが、原理的には原子吸光法・原子蛍光法に比べて改善しうる見通しである。
|