本研究は昭和60、61、62年度の3年間にわたる予定のものである。現行の強度設計や強度保証試験は、安全率に象徴される経験的色彩の強いものであり、その合理化が望まれている。本研究は構造信頼性工学にもとづいて、理論的根拠を有し、しかも実用性を備えた実際的手法の開発を目指すもので、具体的には、確率分布形を仮定しない場合の手法の開発、確率分布形を仮定した場合の手法の開発、開発した手法のコンピュータプログラム化を行おうとするものである。本年度は第1年度であり、まず分布形を仮定しない場合の手法の開発に関しては、本研究代表者によって先に提案された平均値と分散のみを用いた破損確率の上界式をさらに改良するための研究を行った。当初は変分法の適用を試みたが、途中から線形計画法の適用に切り換え、現在もこの線に沿って検討を進めている。また、平均値と分散のみを用いたいわゆる信頼性指標について新たな検討をくわえ、その理論的根拠と実際的意味について新しい知見を得た。次に、確率分布形を仮定した場合の手法の開発に関しては、まず、強度と負荷の双方が正規分布(ないし対数正規分布)に従い、かつ母数をデータから推定する場合について、信頼区間つきの破損確率を計算する手法の改良を行い、新たな成果を得た。また、実働荷重疲労に対する信頼性設計手法について検討を行い、新しい手法を開発した。次に、コンピュータプログラムの作成に関しては、本年度は論理プログラミング言語PROLOGの応用について主として検討を進めたが、他のプログラミング言語の応用も考慮している。以上の研究を実施するために、16ビットマイクロコンピュータ2式等を購入し、数値計算やRROLOGの検討に活用した。 以上のように、本年度は3年継続予定の第1年度として計画していた研究実施項目のすべてにわたって研究を実施し、成果を得た。
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