本研究は、走査型電子顕微鏡(SEM)内超精密切削装置の試作開発を行ない、超微小切込時の切削現象を直接観察するとともに、有限要素法(FEM)などによる解析とあわせて、超精密切削機構の解明を行おうとするものである。このため、本年度は、以下の研究を行った。 1.走査型電子顕微鏡内超精密切削装置の設計と試作 超微小切込(0.1μm以下)、微小切削速度(1-5μm/min)で2次元切削を行うSEM内超精密切削装置の設計と試作を行った。 2.試作切削装置の精度と運動特性の測定と評価 試作した切削装置をSEM内に設置し、工具と被削材間の直線運動機構の運動精度と再現性、切込設予装置の精度および分解能の測定を行った。この結果、直線運動を電気マイクロメータで測定した結果、0.02μmの運動精度および0.03μmの再現性が得られた。また、微小速度(10μm/min)においてもスティックスリップの生じないことが確認された。現在、SEMの倍率を上げ、より詳細な精度測定と評価を行っている。 3.試作切削装置の切削特性に関する予備的試験 アルミニウム、銅などの軟質金属と天然ダイヤモンド工具の組合せにより予備的な切削実験を行った。この結果、本装置が超微小切削実験に要求される精度、剛性を持つことが確かめられた。 4.有限要素法による切削機構解析 本研究の理論的解析において基本となる有限要素法に基づく超微小2次元切削機構の解析方法論について検討し、剛塑性有限要素法および弾唆性有限要素法に基づく解析手法を新たに開発した。これにより、切削開始時の過渡状態を含む切削状態の解析が行える。
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