研究概要 |
本研究は、高温装置の実環境下でその構造材料や作動流体・火災などが示す熱放射性質に関する基礎研究である。複雑なその熱放射性質を過渡現象として把え、分光学の手法を導入する新しい実験方法を確立するために、高速熱放射スペクトル計測装置を開発し、この方法の有効性を示した。 まず、固体材料の熱放射性質の解明を主たる目的として、高速スペクトル計測装置の第1号機を開発した。この装置は、0.35〜10μmの近紫外〜赤外の65波長点からなるスペクトルを1.5秒ごとにくり返し計測する機能をもつ。スペクトルの詳細構造よりも広い波長域を連続高速走査することに重点を置くものである。垂直入射一鏡面反射方向反射率,半球等強度入射垂直反射率などの測定用光学系を製作し、これらを用いて、金属材料の高温酸化過程における熱放射性質の過渡拳動を調べた。スペクトルには明瞭な光の干渉・回折現象が現れ推移することが見出された。その結果を分析することにより、材料表面の微細構造と熱放射スペクトルの関係やその推移のメカニズムが理解された。高温装置の実環境下でも熱放射性質は系統的に推移することが示され、この計測装置と計測の考え方が、放射伝熱の基礎研究のみならず、蒸発・凝縮などの研究,高温装置の安全管理,生産工程における品質管理にも有効であることがわかった。 ついで、この高速スペクトル計測法を高温の気体や粒子群などの温度・環度分布の計測,火炎燃焼の初期過程の解明などの研究に応用するために、第1号機と信号処理・電気系を共用する第2号機を開発した。この装置は、赤外活性気体の複数のバンドとその間の窓領域での粒子散乱性に注目するため、2.2〜4.5μmの波長域を比較的詳細に計測する。スペクトルを反転解析して上記の分布や微視的な物理量に関する情報を得る数値実験を行い、またその検証実験を進めた。
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