本研究はダンパの作動流体として磁性流体を使用し、これに磁界をかけることにより粘性減衰係数の値を制御し、複雑な機構を一切用いずに電気的・磁気的に減衰力を連続的に制御できるようなセミアクティブダンパを実現することを目的としている。本年度は、実際のダンパをモデルとした実験装置を設計・製作し、様々にパラメータを変えて実験を行い、またその結果をもとに実際にダンパを設計・製作し、その性能試験を行った。 実験装置は減衰力発生部とこれに磁性流体を送り込む駆動部よりなる。減衰力発生部は非磁性体のハウジングに垂直方向の流路を通し、これに先端がくさび状の磁極を両側から水平に突き出して対向させている。磁極は先端形状の異なるものを3種用意した。また、磁極間隔(ギャップ)は磁極調整ねじにより自由に設定できる。このギャップはコイルとともに磁気回路を構成しており、コイル電流により磁界の強さが変化する。実験は、流量を設定後、油圧ユニットを駆動して磁性流体を減衰力発生部に送り込み、このときの減衰力発生部上下の圧力、ピストン速度およびコイル電流を測定する。測定値は、A/D変換後パーソナルコンピュータに取り込み処理した。 磁極の形状、磁極間隔、コイル電流、ピストン速度を様々にかえて、磁性流体流速と減衰力発生部での減衰力との関係を調べた結果、減衰力変化について次のようなことがわかった。【◯!1】流路がなめらかになるような磁極形状ほど大きい。【◯!2】磁極間隔が大きいほど大きい。【◯!3】コイル電流が大きいほど大きい。【◯!4】ピストン速度が大きいほど小さくなる。したがって、減衰力が大きくなるにしたがい減衰力変化は小さくなる傾向があることがわかった。 これらの結果をもとに自動車用のダンパを設計し試作品ができあがった。今後性能試験を行い制御方法を検討していく予定である。
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