研究概要 |
本研究は、顕微鏡下において、プレパラート上に置かれた真核をもつ生物細胞を操作対象とし、この細胞を微小操作器で切断,切除,開口などの手術を行ない、さらに細胞内の核を吸出して他の断片を注入するなどの操作を、非熟練者でも自由に行なえるようなマイクロマニピュレータ(微小操作器を含む)を開発することを目的としている。 咋年度にひき続き、本年度は3自由度のバイモルフ型微小操作器の性能向上を目的として試作を重ねた。この微小操作器はピエゾ素子(セラミック素材)をバイモルフ形に構成しており、微小並進運動を実行させるとき、極めて感度の高い位置制御が可能となり、最終試作器では容易に1/10ミクロンメータの感度を実現させることができた。微小操作器の先端には、通常ガラス製の針やピペットが取り付けられ、これを介してプレパラート上の細胞と接触している。そこで、この微小操作器システムをサーボ化するに必須とされる接触反力信号検出を行なうため、咋年度に確認した自律振動形に微小歪ゲージ機構を適用した方式を採用し、針先端での印加力の検出感度を【10^(-3)】dyne域にまで高めるべく解析と設計試作を繰り返したが、実際の操作條件では、針やピペットが液浸状態となるため、目標よりも2桁低い感度にならざるを得ないことが分った。 画像処理系による自動位置決め系は予定通りの機能をもつことが分った。しかし画像処理系とマイクロマニピュレータ系との連けいについては問題がある。つまり顕微鏡の視野は非常に狭いから、マニピュレータの一連の作業動作の大半は視野外となるため、この画像処理系が有効に働くのは実際に細胞操作を行なっている期間に限られている。このため、シーケンス制御回路によって駆動するように設計した。総合試験の結果、おおむね予期された充分な性能を有することが検証された。
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