本研究は高速スイッチング動作可能、並列運転容易、電圧制御形など多くの優れた特徴を持つパワーMOSFETを用いた大電力高周波電源の実用化を目的とし、半導体誘導加熱に適した2MHz、3kWの高周波インバータを試作して、実用化のための各種問題点の検討及び基礎データを取得したものである。主な研究成果は次の通りである。 1.ブリッジ形方形波出力インバータを各アームにパワーMOSFET(高周波用横形構造)4個並列および回生用ショットキーバリアダイオード1組(耐圧の関係で3個直列)を逆並列とした回路構成で試作した。スイッチング時のサージ電圧の原因となる分布インダクタンスを極力小とするため、立体的な素子配置、銅板による配線を行ない直流側各部にセラミックコンデンサを多数並列に配置した。 2.パワーMOSFETのゲート駆動回路では高周波雑音による寄生発振や誤動作が問題となったが、電源および制御信号の入力部分にコモンモード雑音防止用チョークコイルを挿入し、かつゲートへの出力部分にフェライトビーズをつけることにより安定な高速スイッチング動作(ターンオフで約30ns)を実現した。 3. 純抵抗負荷および誘導性負荷について試作した高周波インバータの特性測定において、2MHz、2kW(純抵抗負荷)で約90%と高い効率が得られた。また、スイッチング損失やオン抵抗損失などの定量的検討を行ったが、2MHzの最高周波数ではパワーMOSFETのドレイン・ソース間容量の充放電損失が全損失の約60%を占めることが明らかとなった。 4.誘導加熱用コイルとコンデンサから成る並列共振回路と高調波抑制用インダクタンスを直列接続して負荷とし、共振回路のQ値、インバータの周波数、電圧などを変化させて実験し、回路定数や動作条件と効率の関係、直流側から見た等価インピーダンスの周波数による変化など、誘導加熱に応用する場合の基本特性を明らかとした。
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