1. プラズマCVD法による絶縁膜の形成 進行波素子の作製に用いられる化合物半導体は高温プロセスによりV族元素の解離を生じるため、50Hzの低周波プラズマを用いて、室温でシリコン窒化膜を堆積する技術をはじめて確立した。さらにこの方法により堆積したシリコン窒化膜が高温形成のCVD膜に匹敵する電気的特性を有することを明らかにした。 2. 超格子構造を用いた進行波増幅相互作用の数値解析 素子構造の最適設計および進行波増幅相互作用における物理を明らかにするためプラズマ流体モデルによる電算機数値解析を行なった。これより、相互作用により生じたキャリア波が高い増幅利得を有すること、および増幅利得の最大となる最適動作層厚が存在することを明らかにした。最適動作層厚はキャリアのデバイ距離に一致する。また大電力増幅素子として利得を下げずに大出力を得るには最適厚とした動作層を積層させた構造が有効である。この点から超格子構造を用いることが有効であることを明らかにした。 3. 化合物半導体における固体進行波相互作用の観測 遅波線路にインタディジタル線路を用い、前項の理論で明らかにした設計の指針に基づき電子の閉じ込め方法の異なる進行波素子を作製した。これらは【◯!1】半導体薄膜を利用するものでGaAs MOVPE成長層およびシリコン窒化膜を用いたMIS構造を有するもの【◯!2】半導体ヘテロ接合に生じるバンドの不連続を閉じ込め障壁として利用するものでMBE成長したAlGaAs/GaAs単一ヘテロ構造を用いたMES構造を有するものの二種類である。これらの素子においてマイクロ波帯(0.6〜2GHz)で半導体中のドリフト電子と遅波線路を伝搬する電磁波との間の進行波相互作用をはじめて観測した。これにより化合物半導体超格子構造を用いた進行波増幅素子実現の可能性を明らかにした。
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