本研究は、Gb/s以上の高速直接変調時にも安定な単一モード動作が得られる動的単一モードレーザの高性能化を目的としており、本年度は、低電流動作化および高調波変調時の動作特性の向上化について重点的に研究を行ない、以下に述べる成果を得た。 動的単一モードレーザとして期待される1.5〜1.6μm波長(GalnAsP/lnP分布反射器集積レーザの基本構造、およびその作製工程に起因する諸問題を検討した結果、分布反射器領域と活性領域の高効率導波路間結合および分布反射器の高反射率化を、現有の結晶成長技術で実現しうる新しいバンドル集積導波路構造を発明すると共に、この構造を用いたGalnAsP/lnPバンドル集積導波路分布反射器(BIG-DBR)レーザを実現した。このBIG-DBRレーザにより、発振閾値電流の低減化を試み、活性領域長100μmの素子で28mA、50μmの素子で22mAという分布反射器レーザとしては記録的な低電流室温連続動作を達成し、高性能動的単一モードレーザ実現の基礎を確立した。 高速直接変調時における動的単一モードレーザの主モード対副モード光強度(副モード抑圧比)を増大させ、高い単一モード性を達成するための設計方針を理論的に検討し、活性領域長の短縮化および活性領域幅の狭小化が重要であることを明らかにすると共に、実際に異なる活性領域長のBIG-DBRレーザを試作し、20GHzの高速直接変調時にも32dBの副モード抑圧比が得られることを実験的に明らかにした。 また、外部からの反射戻り光によるレーザのモード跳躍雑音の理論的検討を行ない、動的単一モードレーザではバイアス電流を高くすることにより、このモード跳躍雑音を除去できることを見い出すと共に、BIG-DBRレーザを用いて実験的にこれを明らかにした。
|