1.酸素と三弗化窒素の混合ガス中でシリコンの酸化を行い、基板温度をパラメータとした酸化膜厚の三弗化窒素ガス濃度依存性から、弗素増速作用の起こる最低の限界温度は、約400℃であることを明らかにした。酸化温度を下げると増速作用が起こるのに必要な三弗化窒素ガスの濃度が増加し、400℃では約10%に達するからである。低温では、三弗化窒素の熱分解率が下がり、生成される弗素ラジカルの量が少ないため、増速作用に必要な弗素ラジカル量を三弗化窒素の濃度を上げることによって供給しなければならないためと考えられる。三弗化窒素の分解波長を有するArFエキシマレーザー光を照射して400℃で酸化を行ったところ、濃度は0.2%まで低減できたことから、上のモデルが妥当であることが証明された。またこの光励起弗素増速酸化は400℃より低温での酸化法として有望であることも見い出された。以上の結果から、VLSI製造のための低温プロセスとして要求されている温度(450℃)以下で酸化が可能であることを初めて実証できた。 2.酸化膜厚の時間依存性等から、弗素増速機構は弗素が酸化膜とシリコンの界面での酸化反応の触媒として働き、界面酸化反応速度を増加させるためであることを明らかにした。 3.弗素増速酸化膜の熱処理において、水分を含む酸素ガス中で熱処理を行うと、乾燥酸素ガス中で行う場合と比較して、弗素と酸素の置換反応速度が大きいことが見い出され、その結果純粋な【SiO_2】膜に近い組成の酸化膜が得られることを明らかにした。 4.弗素増速酸化膜を用いたMOS構造の電気的特性評価によって、酸化膜とシリコン界面の界面準位密度及び酸化膜の絶縁耐圧は、熱処理によって著しく改善されることを明らかにした。
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