研究概要 |
先天的あるいは後天的理由のために、音声によるコミュニケーションに障害を持つ人が、コンピュータの助けを借りて生成した文を、合成音声として出力できるような支援システムの開発に着手し、以下の成果をえた。日常話される対話のなかには、切符の予約や出前の注文のように定型的なものがすくなくないことに着目して研究を行なった。定型的な対話は、いくつかの絞切型の文の系列からなる。対話を円滑につづけるためには、話し手は相手の発話に応じて、絞切型の文のどれかを選び、これを発話するだけでよい。絞切型の文を、対話を始める前にあらかじめ支援システムに登録しておき、対話の流れに応じて予想される相手のいくとおりかの発話のそれぞれに対する応答文をデイスプレイ画面上に表示し、相手の発話に応じて表示された文のどれかを選択し、テキスト音声合成部を介して発話する。つまり対話のフローチャートを支援システムの中に埋めこみ、使用者は対話時に流れの制御だけを行う。このようにすれば、柔軟かつ迅速に対話を行なうことができる。このような考えにもとづいて、パーソナルコンピュータにテキスト音声合成機能を持たせた支援システムを試作した。対話の例として,電話による列車の切符予約と、寿司の出前注文をとりあげ、電話による対話が可能であることを確めた。絞切型の文の中で、切符の種類、枚数、発着駅名などは対話を始める前に使用者が設定できるようにしてある。以上の例では、対話のフローチャートは、コンピュータの専門家がシステムに埋め込む形となっているが、コンピュータに不案内の一般の使用者が、対話のフローチャートをシステムに埋め込めるようにできれば、システムの用途が拡大するものと考えられる。そこで、フローチャートを、一般の使用者でもシステムに埋め込めるようにするにはどうしたらよいかにつき、検討を加えその構想をえた。
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