本研究の目的は、半導体技術を用いて複数のバイオセンサを同一基板上に集積化し、量産可能な低コストの臨床検査用小型センサを開発することである。本年度は、固体化グルコースセンサの研究を集中的に行った。これはガラス基板上に金の薄膜電極による【H_2】【O_2】電極を製作し、光感応性のPVA膜によりグルコース酸化酵素を電極上に固定化したセンサである。この方法により、酵素を含むPVA膜をスピナコーティング法により基板上に均一に塗布したのち、電極上のみ酵素膜をホトリソグラフィーにより残すことができる。この工程を繰り返せば数種類の酵素膜を所定の電極上に固定化でき、複合機能バイオセンサを大量生産することができる。本研究者によりこの方法がグルコースセンサに有効であることが示されていた。そこで、本年度は選択性向上を目指した。その結果、基板上に二組の金電極を作り、活性な酵素と失活させた酵素の膜をそれぞれの電極上に固定化し、両電極の差動信号を取れば、陽極反応を起こす物質(アスコルビン酸等)が起こす妨害信号を除去できること分かった。この成果により、安価で、撰択性の高いグルコースセンサの実用化が可能になったと考えている。 尿素FETセンサについては、従来の研究により一応の特性が得られていたが、更に高濃度の尿素に対する感度を得るために、LB法による酵素の固定化を試みた。その結果、従来のPVA膜を用いた場合は【10^(-4)】〜【10^(-2)】g/mlの濃度に感度があり、それ以上の濃度に対しては出力が飽和してしまった。これに反し、酵素の分子を脂肪酸に吸着させ分子膜とし、LB法によりFET上に累積させると【10^(-2)】〜3×【10^(-1)】g/mlの濃度範囲に感度を示した。加えて、応答時間が10秒以内と従来のセンサの1/3以下に短縮される事が分かった。 来年度以降はこれ等の成果の上に立ち、各センサを同一基板上に集積化し本研究の目的遂行を図る所存である。
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