研究概要 |
病気の診断, 治療のために, 体液中に存在する各種微量有機物を小量の検体(血液, 尿など)のもとに, 迅速かつ高感度に計測する手段が望まれている. 本研究では集積回路技術と酵素固定化膜技術を用い, 小型かつ複合機能化したバイオセンサの開発を行なった. まず, 水素イオン感応性ISFET表面にウレアーゼを固定化し, 尿素センサを作製した. これは, ウレアーゼが尿素を分解した際起こすpH変化をISFETで検出するセンサである. グルコースおよび尿酸のセンサは, 光感応性PVA(Poly Vinyl Alcohol)の酵素固定化膜と金薄膜のH_2O_2電極を使い実現した. すなわち, ガラス基板上に3個の金薄膜電極を蒸着し中央は共通カソード, 左右をアノードとした. アノード上には, アセチルセルロース膜と酵素膜を積層した. グルコース検出にはグルコース酸化酵素, 尿酸検出にはウリカーゼを使った. 両酵素はグルコースおよび尿酸を酸化し, H_2O_2を発生する. H_2O_2はアノード上で酸化され, このときの電流よりH_2O_2発生量, さらにグルコースおよび尿酸の濃度を知ることができる. アセチルセルロース膜はH_2O_2を選択的に透過させ, 体液中の還元性物質(例えばビタミンC)がアノード上に到達し, 酸化され妨害電流が発生するのを防ぐ. このセンサチップを試料溶液に浸したときの応答を調べたところ, 両センサはグルコースおよび尿酸に選択性高く応答し, 直線感度範囲は, それぞれ0〜50mg/dl, 0〜5mg/dlであった. 臨床計測用には若干高濃度側の感度が不足するが, 膜構造を改善すれば充分使用できるものになる. 最後に, これらのセンサの実用性をチェックするために簡易なフロー試験装置に組み込み実用試験を行い, 自動測定装置に本センサを使うための基礎実験を行なった. さらに, ホームヘルスケア用グルコースセンサの開発を試み, 商業化のためのプロトタイプを作製した. 以上により, 集積回路技術を使った小型バイオセンサの実用化に見通しを得た.
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