音波の非線形現象を利用した低周波指向性パラメトリック音源を試作し、これを用いたパルス・エコー法による高性能海底面及び海底下情報収集の実験を行った。試作音源は理論計算を踏まえて、共振周波数88kHz、直径80mmの円形圧電型振動子7個を円面状に配列したものである。このときの外寸直径は28cm、等価音源としての直径は23cm、Qはおよそ15.5となった。海底下深くまでの情報を得るには2次周波数(差周波数)は低い方が得策であるものの、1次波より2次波への変換効率、距離分解能、海中雑音を考えて7kHzとした。なお1次波変調はAMとしている。水槽実験による2次音圧は6kW入力で180dBrelμPa・m、-3dB全指向角は7°程度となった。土砂が廃棄されている海底50m程度までの海域で実験を行い、次のことが判明した。1.1次周波数では海底面のプロファイルのみしか得られないのに対し、2次周波数7kHz成分を用いると海底面のみならず海底下30m程度までのプロファイルが鮮明に記録される。2.パラメトリック音源の鋭い指向性によりマルチパスによるエコーグラムのSN比劣化が見られない。3.第2高調波176kHz成分は1次波より鮮明に海底面プロファイルを呈示する。4.従来からサブボトムプロファイラとして海底下の情報を得る装置はあるものの、それに比べると今回はおよそ1/4の寸法(音源の大きさ)で同程度以上のエコーグラムのSN比を得ることができる。以上、本研究結果よりパラメトリック音源を用いた海底探査システムは浅海において十分実用的であることが実証された。
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