バイアス磁界発生用に永久磁石と高透磁率ヨークから成る周期構造磁石系を用い、且つその下部に縦波・横波分離検出用の2組のミアンダライン電極を配置した構成の非接触電磁形超音波トランスジューサ(EMAT)が本研究担当者によって提案された。本研究の目的は、この新しいEMATを実際に試作し、その諸特性を総合的に評価すると共に、非破壊検査用超音波トランスジューサとしての性能を確認することである。本年度は次の如き研究成果を得た。 1.試作した同一構造のEMATを2個鉄及びアルミのブロックの両面に対向させて超音波の送受信実験を行い、EMATの変換損失特性を測定した。その結果、0.5〜1.5MHzの周波数での変換損失は、被検体の材質によって多少の差はあるが、70dB以下の値となり、周波数に対する変化も緩やかで極めて広帯域の特性が実現できることを確認した。 2.被検体が鉄の場合の変換損失は、横波の方が縦波より小さくなり、その差が約4dBあることを明らかにした。 3.縦波超音波を受信する場合、EMATと被検体との間隔【G_1】を増すと出力電圧Voは指数関数的に減少するが、【G_1】を3mm程度に大きくしても非破壊検査に十分な検出感度が得られることを確認した。 4.横波超音波をEMATで受信する場合、その出力電圧Voは角度依存性を持っており、送信用と受信用のEMAT間の角度θに対し、余弦関数的に変化することを確認した。 5.アルミブロック上に発生させたAE(音響放出)波をブロック上の各点でEMATにより検出する実験を行った。その結果、ブロックの下面ではブロック内部を伝わる縦波と横波のバルク波が、また上面ではブロック表面を伝わる表面波が、さらに側面ではこれらのバルク波と表面波がそれぞれ分離して検出され、本EMATが非破壊検査用の超音波トランスジューサとして十分実用できるものであることを確認した。
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