船の操縦流体力を推定するための拘束模型試験として、従来から模型船に正弦運動を与えて、その周波数についての流体力を求める周波数応答試験法が実施されている。これに対して、過渡応答試験法は任意のパルス状の運動を模型船に与えて、その反力として得られる流体力を計測し、運動と流体力のタイムヒストリーを夫々フーリエ変換して、各周波数に対応する流体力成分を解析的に求める技法であり、周波数応答試験に比べて格段の省力化ができるところに特色がある。 しかし、値のよい計測結果を得るためには、模型船にパルス状の運動を与える駆動装置のメカニズムとパルスの形に問題があり、本研究では上記の問題点を解決するために、駆動装置を試作して次のような試験を実施し、実用化へのめどを得た。 1.現存の強制動揺装置に過渡運動用の駆動装置を付加して模型船の駆動確認試験を実施した。 2.模型船に与えた運動とその反力として計測された流体力をフーリエ変換して、各周波数成分に対する流体力を求める解析用のプログラムを作成した。 3.流体力の速度成分と加速度成分との間の流体力学的関係をヒルベルト変換により確認した。 4.船の回頭及び横流れ運動に関するインパルス応答関数を求めた。 5.このインパルス応答関数を用いて、過渡運動中の操縦運動を記述するための数学モデルの構成を試みた。
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