研究概要 |
最近の回流水槽は性能が向上し、船の推進性能を定性的さらに定量的に把握する目的で使用され始めている。本研究は、困難とされている自航試験を回流水槽で行うには、どのような問題点があり、それをどう克服するかに主眼をおいて、曳航水槽における実験結果および理論計算結果と対比させながら、回流水槽における自航試験法の開発を目指すものである。使用する模型船は1.5mと2mのタンカー船型であり、それぞれ舵無しおよび舵付き状態、さらに満載およびバラスト状態についての実験を行なうが、今年度は舵無し状態について実験する。 今年度の研究により以下のような成果があった。 1.曳航水槽と回流水槽で、長さ1.5mと2mのタンカー模型船(舵無し、満載・バラスト状態)について、抵抗、プロペラ単独、自航試験を行い、次の事が判明した。 (1)回流水槽では、形状影響係数が曳航水槽より0.3程大きい。 (2)2mの模型を用いれば、推力減少率、有効伴流率は安定な値が得られるが、1.5m模型では信頼出来るデータは得られにくい。 (3)プロペラ単独性能は、曳航水槽での方が【K_T】,【K_Q】とも大き目となる。 2.プロペラの尺度影響を九大の理論計算プログラムにより計算し、【K_T】の変化はわずかであるが、【K_Q】の方はかなり変化することを明らかにした。このことは推力については信頼できることを示している。 3.大阪府大で、実船(313m)と模型船(7m,3m,2.5m,2m,1.5m)のまわりの粘性流場の計算を行い、実船と模型船の間には、大きな流場の差があることが明らかになった。 4.推進性能の理論を、波流れ及び粘性流場まで取り入れた形で完成させた。
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