上昇流式嫌気性スラッジベッド反応器(UASB)は、付着担体を用いないで、汚泥自身の自己固定化機能によって、沈降性の優れた粒径1〜3mm程度の緻密な凝集体(グラニュール)を形成し、反応器内に極めて高濃度の生物保持を可能にすることで、高有機物負荷を許容できる新世代型高速メタン発酵バイオリアクターである。UASB法の処理性能の成否は、メタン生成菌のグラニュール状増殖にかかっている。本研究は、パイロットスケールおよびラボ・スケールUASB反応器を用いて、グラニュール形成機構の解明に主眼をおいて行なわれたもので、得られた知見は以下の通りである。 1.UASB反応器の適用廃水種を拡大する為に、2相嫌気性システムを提案し、メタン生成相としてのUASB法処理性能評価を150日間連続実験によって検討した。その結果、容積負荷70KgCOD/【m^3】日でCOD除去率80%以上を安定に維持した。 2.反応器内生物濃度は、ベッド部でMLVSS40000〜50000mg/l程度、ブランケット部で10000〜20000mg/l程度であった。 3.グラニュール汚泥のメタン生成活性は、1.0〜1.5KgCOD/KgVSS・日程度で、種汚泥である下水中温消化汚泥よりも、約20倍高くなった。 4.低級脂肪酸で培養したグラニュール汚泥は、グラニュール表層から深層までMethanothrix属メタン菌の糸状増殖によって形成されていた。一方、炭水化物系廃水で培養したグラニュール汚泥は、表面近傍に加水分解・酸生成を担う菌群が細胞外ポリマーを分泌し、細胞同志がアグレゲーションしている棲み分け現象が、走査・透過電顕によって観察された。また、炭水化物系培養グラニュールの細胞外ポリマーは酸性糖(ウロン酸)含量が高かった。
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