研究概要 |
上昇流嫌気性スラッジベッド反応器(UASB)は、原廃水の上昇流モード下で、付着担体を用いないで、汚泥生物自身の自己固定化・アグレグーション機能によって、沈降性の優れた粒径1〜3mm程度の緻密な凝集体(グラニュール)を形成し、反応器内に極めて高濃度の生物保持を可能にすることで、高有機物負荷を許容できる新世代高速メタン発酵バイオリアクターである。本研究の目的は、UASB反応器の処理性能を、実廃水を用いたパイロットスケールプラントおよび人工基質を用いたラボスケールプラントによって実験的に把握し、実用化にあたっての設計・操作方法を確立することである。塔高4m,反応器容量300lのパイロットプラントによる約2年間のフィーズビリティスタディの結果、有機物負荷15kgCOD/【m^3】・dayで除去率90%程度の安定な高速処理性能を達成した。また、ラボスケール実験では、炭水化物系廃水25℃処理では有機物負荷32kgCOD/【m^3】・day,低級脂肪酸混合液基質35℃処理では有機物負荷70kgCOD/【m^3】・dayで除去率80%以上維持と、従来法(浮遊増殖法)の20倍以上の驚威的処理を発輝することに成功した。また、同プロセスの処理性能の成否を決定する汚泥グラニュール状増殖メカニズムを検討した結果、酸生成細菌群の分泌する高粘性細胞外ポリマー(酸性多糖類,ウロン酸含量が高い)と、酢酸資化性メタン菌Methanothrix属の高付着特性・糸状増殖特性が大きく関与していることが判明した。さらに、同プロセスの運転・管理指標としてのグラニュール状増殖微生物群コンソーシアの【F_(420)】補酵素含量,ATP含量,メタン生成比活性等に関して、種々の基質を用いて検討した結果、植種中温消化下水汚泥のそれらの値よりも、それぞれ、5〜26倍,11〜87倍,5〜20倍程度増加することが判明した。
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