石炭の灰分を除去するため、従来のケロシンなどの油状捕収剤を用いて石炭を浮遊させる方法と異なり、灰分成分を浮遊除去する方法について検討を行ない、本年度は以下の結果を得た。 1)国内炭として幌内炭、太平洋炭、外国炭として中国、大同炭、豪州、Goonye Ua炭を用いて、ケロシンを捕収剤とした加圧浮選により分離の難易を検討した結果、幌内炭と大同炭が分離性良好であることが分った。両試料を種々の時間粉砕した試料に対して、メジアン径と90%の石炭回収率のときの浮炭の灰分の関係を比較すると、幌内炭の場合は25μmより細かくしても 浮炭の灰分は2.5%程度で横ばいになるのに対して、大同炭の場合は粒径が細かくするほど浮炭の灰分は低下し、14μmで浮炭の灰分は1.8%となった。これらの結果より、脱灰浮選の試料として大同炭を用いることとした。 2)大同炭に対してカルシウムイオン活性化後のオレイン酸ナトリウムを捕収剤とした脱灰浮選を試みた結果、pH11.5付近において沈炭の灰分が低下する傾向が認められたが、石炭がかなり浮遊し、良好な分離は得られなかった。 3)石炭を分散させ、その浮遊を抑制する種々の試薬の効果を検討した。でん粉、デキストリンは石炭の浮遊を強く抑制するが、灰分成分も同様に抑制し、分離性の改善は認められなかった。タンニンもでん粉と同様の効果をを示した。非イオン性界面活性剤のうちでHCB値9.8〜17.1のものが石炭の抑制に若干の効果が認められた。ポリビニルアルコールが用いた試薬の中でもっとも石炭を選択的に抑制することが認められたが、沈炭の回収率は80%程度、その灰分は5%弱と満足すべき結果は得られなかった。したがって、さらに石炭を選択的に抑制する試薬の開発と灰分成分の効果的浮選法の検討が必要と考えられる。
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