リモートセンシングに関する種々の画像の読図において、特に有用と認められる定まった手法はいまだ確立されていない。したがって、これらの画像を鉱床探査に利用する人々にとっては非常に不便であり、また読図方法がある定型化された手法によっていなければ、これらの画像の解析結果を比較することも不可能である。本研究は、ランドサットその他の画像の読図方法およびこれらから得られる情報を鉱床探査へ利用するリモートセンシングの手法の確立を目的としており、本年度は前者に関連した検討を行なった。 広い地域を小縮尺の画像によってリニアメント(線状模様)を抽出することは、潜在する断裂の分布の予測を著しく速め、さらに地質資料との照合により地質構造運動の解析を速めることができる。リニアメントの抽出を容易にするため、今回、新たな手法として斜面強調図を作成した。これは、ランドサット画像のうち明るい斜面(東向および南向)を黒く塗りつぶして斜面を強調したもので、その陽画と陰画を重ね合わせた後に両図を少しずらすことにより、リニアメントと似た線を得ることができる。本手法では、走査線の影響を受けず、東西系の小規模のリニアメントの抽出に特に有益である。また、そのリニアメント図をN-S、E-W、NWおよびNE系に区分し、それぞれを地質データと対比することで、それらリニアメントに反映される断裂系の形成時期および応力場を推定することができる。本方法を中部地方に適用した結果、抽出されたリニアメントは既知の断層とよく一致すること、中部地方は鮮新世以降では東西圧縮応力場にあることが明らかとなった。さらに、光の方向が任意に変られる電算図形を用いて九州地方の斜面強調図を作成した結果、その方向によってリニアメントのパターンが大きく異なることがわかり、今後のリニアメントの抽出にあたって注意すべき点を検討した。
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