研究概要 |
一般に晶析法は過飽和の達成に多大のエネルギーを要する次点がある. 本研究はアルコールなど水と混和する有機液体を利用する省エネルギー晶析法の可能性に着目し, 基礎データの乏しい重金属硫酸塩-水-有機溶媒系に関する相平衡の研究を集積し, 実際の系への適用を検討したものである. 1.MSO_4-H_2O-C_2H_5OH系(M=Zn,Co,Ni,Cd,Cu)につき相平衡関係を確立し, エタノール添加により硫酸塩の溶解度が顕著に低下することを示した. なお, これら系には下部臨界温度を有する2液相分離の傾向が内在しており, カチオンによる塩析効果の差異をアコカチオン生成の自由エネルギーから説明した. 又塩晶出率と必要エタノール量との関係を求め, 省エネルギー晶析法としての有望性を指摘した. さらに上記相平衡に及ぼす硫酸添加の影響を調べ, 硫酸共存系に適用する場合の指針を与えた. 2.CuSO_4あるいはZnSO_4水溶液に対するメタノール, イソプロパノール, 第三ブタノールおよびアセトンの溶媒効果を調べた結果, 塩の溶解度の低下は第一義的には誘電率の変化により説明されるが, 2液分離傾向には共存有機溶媒の水構造への影響が関与していることを示し, 2液分離を利用する濃度法を合わせ考慮することにより, 新しい分離法を構築し得る可能性を示唆した. 3.混合塩素, CuSO_4-NiSO_4あるいはCoSO_4のエタノール水溶液ならびにNa_2SO_4-NLSO_4あるいはCoSO_4のメタノール水溶液の各系について相平衡を定め, これら混合塩の分別晶析の条件, その程度を明らかにした. 得られた結果から実用工程への適用が有望視される銅電解廃液の処理について, 現場の試料を用い, 適用性を確めた. なお, 上記有機溶媒以外の有機液体の利用の可能性について回収方法も含め研究を続行している.
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