研究概要 |
本研究は、気相急冷法による非平衡合金の形成能,並びに非平衡合金の機能材料への応用の可能性について、基礎的知見を得ることを目的としている。本年度の研究成果を以下に記す。 1.非晶質Fe-Ti合金の構造; 直流対向ターゲット式スパッタリング法により作成した、厚さ約50μmの試料につき、X線構造解析を行ない動径分布関数RDFを求めた。平均配位数は約11,RDFの第2ピークが分裂していて近距離秩序が存在することが判明した。 2.気相急冷Fe-Cu-Ag合金の磁性; rfスパッタリング法により作成した試料につき、X線構造解析,磁化,メスバウアー効果の測定を行った。Fe,Cu,Agは平衡状態では互いに非固溶であるが、気相急冷合金3元非平衡状態図においては、Feサイドでbcc単相,Cu,Agサイドでfcc単相が形成され、中央組成付近で非晶質相が得られた。この非晶質合金は世界最初のものである。また、合金中のFe原子磁気モーメントは格子定数とともに増加する。 3.気相急冷Fe-Cu,Fe-Ag合金の非平衡相形成並びに磁気特性に及ぼすArガス圧,基板温度の影響; 何れの場合もFe高濃度側でbcc単相,CuあるいはAg高濃度側でfcc単相が形成される。水冷基板上に作成した場合、Arガス圧が上昇するにしたがってbcc単相が拡張し、fcc単相が縮少する。一方、液体窒素冷却基板上に作成した場合、bcc単相,fcc単相領域が各々拡張される。更に、bcc-fccの2相共存合金において、垂直磁化膜が得られる。 4.非晶質MoBN,CrBN合金の超伝導材料; 何れも低温で超伝導を示し、超伝導転移温度はBN濃度約15at%で最大となる。
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