研究概要 |
アモルファス薄帯製作の方法としてよく知られている"片ロール法"は溶融金属を一方向に凝固させている。この場合、急冷速度が十分に速ければ、薄帯全体がアモルファスとなる。しかしながらある条件においては、ロールに接触しない面(自由面)の側の表面近傍のごく薄い領域に結晶相が形成される場合がある。しかも重要なことはこの結晶相がある結晶方位に配向した集合組織となっていることである。本研究によって始めてFe-Zr系(【Fe_(91)】,【Zr_9】),Ni-Zr系(【Ni_(90)】【Zr_(10)】および【Ni_(80)】【Zr_(20)】)合金においてこのような事実が発見された。本研究では(1)X線回折によりこれらの表面結晶相の組織を調べること(2)これらの集合組織が形成される条件を明らかにすること。(3)これら表面結晶相がアモルファスの結晶化に与える影響を調べることを目的とした。 その結果、表面結晶相は【Fe_(91)】【Zr_9】についてはδ-鉄の(100)textureであり、【Ni_(90)】【Zr_(10)】については、Niの(111)textareおよび【Ni_(20)】【Zr_(80)】については、(110or101)のW-Zrのtextureであることが明らかとなった。またこれら表面集合組織が形成される条件は合金組成が深い谷となる共晶点近傍でかつ共晶点温度が高い(1000゜C以上)ことが必要であることが明らかとなった。 またこの表面集合組織はアモルファスの結晶化に際しては結晶核となって薄帯の結晶方位をそろえることが明らかとなった。 以上のことから片ロール法を利用し、溶融凝固の際に意図的に自由表面側に表面結晶相を作り、この結晶相が強く結晶配向していることを利用し、その後の一方向加熱により、この結晶相を成長させることにより、溶融状態から結晶方位をそろえた薄帯を連続的に製造することが可能となる。本研究では基礎的研究に終りこのような工業化の方策の具体化にまでは及ばなかったが今後は本研究をさらに継続発展させ実用化にこぎつけていきたい。
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