アルミニウム-銅系(以下Al-Cuと称する。)合金は熱処理によって軟鋼に匹敵する強度を有し、しかも強度に対する重量比が高く、低温においても鉄鋼材料の如き脆性を示さない等の優れた特徴を有している。しかし乍ら、このAl-Cu系合金の溶融溶接性の改善は殆んどなされておらず、優れた特徴が充分に発揮されていない。 Al-Cu系合金における溶接性の劣下は溶接部における高温割れ感受性の高さと溶着金属の強度不足による。 本年は研究の初年度であるが、実施計画通り溶接金属の凝固過程・金属組織及び機械的性質に及ぼす化学組成の影響についての研究を行い、以下に示す成果を得た。 1)Cu濃度を2%から6%まで変化させた試料を用い、一部改良したフィッシュボーン割れ試験の結果、割れ長さは2%Cuが最も長かったが、いづれの合金においても割れの発生及び成長は液相線温度付近で起る。 2)クレーター割れ試験の高速度VTR観察から、このときの星状割れはボンドからクレーター中心に向う凝固割れである。 3)クレーター部の凝固速度を変化させる試験から、凝固速度の低下に伴って、星状の割れから円弧状の熱影響部液化割れに移行することが示され、その原因は熱伝導様式の変化に基づく収縮歪の発生の違いであることが判った。 4)いづれの高温割れ発生の場合も、粒界に低融点液膜の存在が認められた。 5)溶接部の機械的性質はMg原子の添加によって改善され、特に熱影響部において著しい。溶着金属部は入熱の小さいことが有効であるが、その他の元素の添加効果については今後の課題である。
|