研究概要 |
本研究費の補助によって開発設置された、溶接熱サイクル再現高速材料試験機を用い、アルミニウム合金を試料とすることによって、溶接高温割れの再現を可能とした。得られた成果を以下に列挙する。 1)6000系合金(Al-Mg-Si)において、割れ発生は歪み速度にほとんど関係なく約630℃を臨界温度としている。 2)2000系合金(Al-Cu)においては、割れ発生の臨界応力はその組成(2,4,6%Cu)に依存せず、7〜10g/【mm^2】という非常に小さな値である。 3)2000系合金(Al-Cu)における液化割れの臨界変位量は、合金元素量に依存し、Cu濃度が高い程大きいことが示された。 4)これらのことから、実際の熱影響部に発生する液化割れや溶接金属部に発生する凝固割れ等の高温割れ発生機構には本質的な差異はない。即ち、再溶融又は最終凝固部に当る粒界低融点物質(共晶液)を介しての、特異な破壊様式であることが示された。 次に、以上の如き溶融溶接性の悪い高力アルミニウム合金に対して、真空蒸着コーティングによってTiを添加した溶加材と【N_2】を添加したシールドガスとを用いて、溶接性の改善を試みた。その結果、Tiを溶加材に添加しかつ【N_2】をシールドガスに加えたもののみが、a)細粒効果とb)著しい硬度の上昇を示し、溶接性の改善が認められた。その機構は、ガス反応生成ファインセラミックス分散強化と考えられるが、装置の操作トラブルによる実験遅延のために現時点では直接的に確められていない。 今後は溶接性の改善機構の解明と共に、実用化に際して必要な基礎データーの確立を急ぐ必要があり、鋭意努力中である。
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