本研究は低合金鋼の常中温度域での脆化挙動を解析し、その脆化の防止環を検討した。実験は各種低合金鋼の青熱脆化(以下熱ひずみ脆化)と水素脆化を重疊した実験、ひずみ集中型溶接割れ試験、高温水素脆化実験を行った。さらにこれらの脆化に伴なう割れの検出する自動認識システムの確立を試みた。 まず、各種鋼種の再現熱影響部(以下HAZ)は熱ひずみ脆化により水素脆化感受性が増加し、この感受性は鋼材のCeqおよび予ひずみの増加により敏感となり、それらにより評価しうる。水素を溶解した状態での熱ひずみ脆化は国溶窒素量およびひずみにより評価される。拘束度が比較的小さくかつ、面外変形によるひずみが大きな多層溶接部は熱ひずみ脆化と複合して低温割れ感受性が増加した。多層溶接部における止端割れおよび溶接金属割れの防止予熱パス間温度は継手の強度レベル、拘束度からひずみを推定し、化厚組成および固溶窒素等の機質的因子を用いた熱ひずみ脆化を考慮した水素脆化感受性指数により推定しうることを明らかとした。そこで、実施土でのひずみ集中型溶接割れを再現する実験に、この指数を用いて滴用し、割れが防止しうることが知られ、割れ防止法を確立した。高温水素脆化については実機に近い水素量が得られる溶融塩を用いた高温陰極電解法を開発し、検討した。その結果、αマルテンサイトの生成などのオーステナイトの安定度を示す【N_*】eqにより、高温水素脆化は評価しうることを明らかとした。さらに、これらの割れの検出方法は実機には種々雑音があるものの、割れからのみのAE信号をマイクロコンピュターにより自動的に認識するシステムを開発した。 以上の結果、高温での脆化挙動に対して製作時から、防止対策を予かじめ立てることができ、既設の装置に対してもX線検査よりも迅速に本システムにて検出する手法が確立し、大きな成果が得られた。
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