研究概要 |
本研究は, 自動車車体ようとして近年主に採用されている高張力綱板製プレス成形部材をスポット溶接する際にとくに問題となる溶接部での板の合い, すなわち板の密着性が悪く, しかも既溶接点への分流電流の存在も無視できない場合のスポット溶接性を, 溶接電源や加圧系の変更によって改善することをシステム的に検討したものである. 3年間で明らかにした主要な事項を以下に列記する. 1) 高張力鋼製すきま付部材でのナゲット形式に対する板間すきまの影響を感じるためには, 既溶接点への分流電流を増す, 板表面を滑らかにする, できるだけ低降伏点の材料を選定するとよい. 2) 高張力鋼板で板間にすきまが存在する場合には加圧時に板がバックリングし, 板間でリング状接融が生じて溶接性が低下する. 3) 溶接可能電流域幅を広げてナゲット形式の安定化を図るためには, 交流電源に代えて, 電流脈動の少ない直流電源の採用が奨められる. 5) この定電力特性をもつ直流電源の制御を, チップ間電圧変化に対して溶接電流値が少し遅れて変化するようにすると, すきまは高張力鋼部材に対しても大幅な溶接可能電流域の拡大が見れる. 6) 溶接電流の立上がりスロープに同期させて電極加圧力の負荷状態にスロープをかけると, 単相交流機を用いた場合にでも電流幅は拡大する. 7) 自動車用に利用されている0.6mm程度以上の厚さの鋼板を対象とした場合にインバータ溶接機の必要発振周波数は, この溶接可能電流域が完全な直流とみなせる値で評価して1KHz以下でよい.
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