1.本研究では、生体内あるいは高温場など既存のイオンセンサーが適用困難な環境におけるイオン種計測のための電気化学的及び光学的センサーを開発することを目的としている。 2.電気化学的センサーとしては、フッ素系イオン交換樹脂膜及び種々の高沸点の液膜溶媒で可塑化したPVC膜を感応膜とするイオン電極を試作し、その電極の高温水溶液中測定への適用性を検討した。フッ素系イオン交換樹脂膜型陰イオン応答電極は室温から70℃の範囲でネルンスト応答を示したが、陰イオン間の選択性は小さい。0-ニトロフェニルオクチルエーテル、アジピン酸エステル、フタル酸エステルなどを可塑剤とするPVC膜型陰イオン応答電極は室温から70℃の範囲でネルンスト応答を示した。また、いずれの電極の選択性もHofmeister序列と一致する選択性を示したが、温度の上昇とともに選択性の低下がみられた。これは温度の上昇に従って陰イオンの水溶液一膜相間の分配性の差異が減少するためと推則される。 3.光学的なイオンセンサーとして、光ファイバー先端に蛍光pH指示薬を固定化し、レーザーを光源として単一の光ファイバーを通して指示薬の光励起・蛍光検出を行なうオプトロードを試作した。まずプラスチック光ファイバー先端にアクリルアミド樹脂を接着し、樹脂層にフルオレセイン誘導体を化学的に固定化した。試作したオプトロードはpH3〜8においてpH測定精度±0.05以下の安定な応答を示したが、樹脂層が数100μmと厚いため応答に数分〜10分を要した。次に石英光ファイバー端面にアミノ基を導入し、さらにフルオレセイン誘導体と反応させて、指示薬を端面に化学的に固定化した。試作したオプトロードはpH4〜8で可逆的に応答し、計測器の時定数により応答に約10秒を要した。端面における蛍光強度が微弱であるためpH測定精度は±0.3と劣っているが、検出系などの改善により高感度化できると期待される。
|