研究概要 |
1.化学活性を持つ黒鉛シートの開発-カリウム-テトラヒドロフラン-黒鉛三元層間化合物を800℃以上に急熱することによって膨張黒鉛を合成した。この黒鉛中にはカリウム原子が大略10%程度残留しており、それが希塩酸中の塩素イオンを強く吸着することが明らかとなった。しかし、カリウムの残存量、さらにその状態に再現性が乏しくその吸着特性を定量的に評価するに至らなかった。また、この膨張黒鉛を電極とし、硫酸を電解質とした二次電池を試作し,その充放電特性を検討した。カリウム残留膨張黒鉛は原料天然黒鉛粉末、他の方法で作った膨張黒鉛に比べて著しく電池容量が大きく、しかも、電極の密度に依存し、最適の密度があることが示唆された。 2.磁性を持った黒鉛シートの開発-コバルト-テトラヒドロフラン-黒鉛三元層間化合物を合成し、それを減圧下で急熱することによって分解させ、膨張黒鉛とするとともに、分解生成物であるコバルト粒子を膨張黒鉛中に均一に分散させることができた。その膨張黒鉛を加圧成形することによって黒鉛シートを容易に作ることができた。そのシートは磁性を持ち、磁石に付着することが明らかとなった。コバルトは非常に微細な金属粒子として一様に分散していると考えられ、その詳細な状態分析をおこなっている。 3.高強度黒鉛シートの開発-黒鉛シートの可撓性を保ったまゝ強度を向上させるために炭素繊維との複合化が考えられる。その一環として、炭素繊維自体の膨張化を試みた。年輪状組織を持つ気相成長系炭素繊維は容易に膨張し、リボン状となった。しかしそれと同時に繊維の切断も見られた。メリフェーズピッチ系繊維は、繊維軸に沿って容易に膨張する部分としない部分との繰り返しがみられ、黒鉛化性の異なる部分が共存することが示唆された。PAN系繊維については全く膨張がみられなかった。
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