研究概要 |
二種類の標準試料A(スチレンに少量のNassを共重合させたアニオン性ラテックス),B(スチレンにDEAMを共重合させた両性ラテックス)に対する電気泳動測定及び無機電解質に対する試料Aの臨界凝集濃度の共同測定を数度に渡り行ない、それらの結果を第39回コロイド及び界面化学討論会(1961年10月6〜8日、於筑波大学)で発表した。測定結果の概要は次の通り。 ゼーター電位の共同測定;研究分担者を含めた計八名によって試料A,Bについて二回の共同測定を行った。その結果通常の顕微鏡泳動法ではいずれも±10mVの実験誤差範囲で一致した値となり、ほぽ満足のいく結果が得られた。一方レーザードップラー法や回転グレーテイング法などの高い印加電圧下で測定する方法では大きなゼーター電位の値が観察された。また、臨界凝集点でのゼーター電位を求めるために電解質濃度の関数としてゼーター電位を測定すると、ある濃度で極大が現れる異常現象が観察された。これはラテックスの表面は一般無機コロイドと異なり、電荷を帯びたhairy layersでおおわれていることを示すものと思われる。 臨界凝集濃度の共同測定;標準試Aについて三種類の電解質、KN【O_3】,Mg【(NO_3)_2】,La【(NO_3)_3】,を用いて凝集速度法及び準平衡論的方法(準静的方法)で臨界凝集濃度(c.f.c)の共同測定を行った。その結果いずれの方法でもc.f.c-値は陽イオン価の増加と共に滅少し、Sckultze-Hardy型の凝集を取ることが解った。一般に準平衡論的方法でc.f.c値を求めると、凝集速度法に比べて低い値が得られるが、試料濃度を希釈した系で測定すると、c.f.c値は大きな値となり、今後の測定では実験に際し試料濃度を厳密に規定しなければならないことが解った。
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