媒体の性質や外界よりの刺激に応答して変色する色素は、いわゆる機能性色素として現在注目を集めている重要な色素材料である。このような色素と適当な媒体を選べば、外界の状況に応答して変色する、いるゆる環境クロミズム機能を有する色素系システムを組立ることができる。我々が発見した、2-(p-またはo-ヒドロキシスチルバゾリル)ベンゾ〔a〕キノリジニウムの解離型を基本骨格とするアゾニア芳香族ベタイン型色素は媒体の極性や水素結合性に応じてこれまでに類例のない大きなソルバトクロミズム性を示し、種々の利用が期待されている。本研究はこれらの色素の特長を生かし、表示ならびに記憶材料の開発に応えうる新規色素系の開発を行うことを目的としている。60年度においては、溶媒の極性に対応したアゾニア芳香族型ベタインの吸収スペクトル変化を基礎的に解明することに主眼を置き次の研究成果を得た。 1)アゾニアベタイン型色素としては、4-ヒドロキシ-、2-ヒドロキシ-、2-ヒドロキシ-6-置換スチリル、2-ヒドロキシ-1-ナフチルビニルベンゾ〔a〕キノリジニウムおよびベンゾ〔c〕キノリジニウムを用意し、プロトン性および非プロトン性極性溶媒中での吸収スペクトル変化をTaftの式により整理した。この結果、これらの色素は溶媒の極性、水素結合性の低い場合には充分に近赤外領域に吸収をもつことが可能であることが分った。また溶媒の極性のみならず水素結合供与能に対して大きな感応を有することが明らかとなった。2)非プロトン性溶媒に水を添加すると著しく極大吸収波長が短波長側に移動する。さらに水を添加すればジグモイド型に変化する。これらの変化を選択溶媒和のモデルにより解析し、溶媒のまわりの水の構造が途中で変化することを結論した。他の混合溶媒和についても選択溶媒和モデルがよく適合しうることを示し、機能設計に基礎的資料をえた。
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