1.本年度の実施計画1「時間分割光散乱法測定システムの組み立て」は以下のように大略完了した。 即ち、(1)側壁に光ファイバ挿入用の小孔を穿った試料セル室として真鍮製内径120mmφ、恒温水循環方式のセル室を製作した。 (2)セル室で観測した各角度での散乱光強度を光ファイバ(400μmφ)により光増幅インテンシファイヤに送りこみ、最高【10^4】倍に増幅した後、インテンシファイヤと密着した一次元光検出イメージセンサー(512チャンネル、受光面【2.5^H】×【28^W】mmの石英窓)の10チャンネル部分に記憶させることができた。 (3)インテンシファイヤの使用により未使用時の【10^3】倍の感度を得た。 この結果、純溶媒ベンゼンによる角度90°方向の散乱強度は通常のホトンカウンティング用光電子増倍管で得られる値の1/3〜1/2を示し、この検出器が本研究の遂行に必要な性能を備えていることを保証した。 (4)高速制御回路には1チャンネル当りのスキャンクロック2μ秒、AD変換速度2μ秒、AD変換分解能12ビットのものを使用した。 これにより、512チャンネルに蓄えられた512個の光量値を1掃引当り1ミリ秒(最高)の速度で直接記憶領域(DMA)の1〜512番地に収納することができた。 この結果は超高次構造の形成過程が1ミリ秒刻みで追跡できることを保証する。 (5)DMAからのデータ取り出し、データ処理は10MHzクロック、16ビットCPUのマイクロコンピュータ(容量512KB)と【10^3】KB容量のフロッピーディスク2台の組み合わせで実施できた。 サンプリングプログラムも完成し、高速で大容量のデータ処理が可能になった。 2.上記の組み立てはベンゼンを用いた散乱強度の体積補正実験の終了で完了する。 これは計測回路・制御システムの検定(計画3)作業の完了をも意味する。 現在はこの作業の途中にある。 この作業終了次第、ブロック共重合体溶液を調整し(計画2)、目的とする超高次構造形成過程の追跡(計画4)を試みる。
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