研究概要 |
1. 土壌から核多角体を回収をするための精製法を開発した。その方法はピロリン酸ソーダーによる脱着処理、デキストラン-ポリエチレングリコール6000による水性2層分離、上層の分画遠心からなる。脱着処理前に蒸留水中で熱処理(80°C、60分)すると多角体の収量が大となった。回収多角体は間接螢光抗体法により同定した。 2. 伝染性軟化病ウイルスのRNAの5′末端に分子量12,000の蛋白質が結合していることを明らかにした。濃核病ウイルスのDNAの約85%の塩基配列を遺伝子工学的手法により決定した。この塩基配列より3つのオープン・リーディング・フレームが見出され、そのなかの1つに構成蛋白質が重なってコードされていると推定された。 3. 濃核病に感染した蚕の中腸のパラフィン切片を作成し、皮膜細胞中のウイルス抗原をパーオキシダーゼを標識とした酵素抗体法により検出した。抗原は主として円筒細胞の核中に見出された。感染円筒細胞は新生細胞の分化による新皮膜の形成に伴って、胃腔内に脱落した。新皮膜の円筒細胞は再感染により、核中に抗原が検出された。 4. 桑園で採集したクワノメイガ幼虫から伝染性軟化病と濃核病のウイルス抗原をゲル内2重拡散法により検出した。その検出率には地域差があるが2年前と比べると全国的に高くなっていた。同一個体で2種のウイルスを保持している場合があった。 5. 伝染性軟化病に感染した蚕の糞からES法によりウイルス抗原を検出した。その検出時期は中腸からの検出に比べて1〜2日遅れた。濃核病に感染した蚕の糞から硫酸アンモニウム沈澱法と密度勾配遠心法によりウイルスを精製した。 6. カイコ体液はBacillus thuringiensisによるヒト補体系の活性化を阻示する作用を示した。この結果から、カイコ体液は抗C3プロアクチベーターを含むことが示唆された。
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