研究概要 |
L-セリンは各種のアミノ酸や核酸、リン脂質などの前駆体となりそれらの合成原料であるとともに医薬品や化粧品の湿潤剤として利用される重要なアミノ酸であるが、糖からの直接発酵が困難であり現在糖およびグリシンを原料として発酵生産されている。しかしグリシンに対する収率が低く、安価な製造法の開発が強く望まれている。本研究は、将来的に有望な資源であるメタノールと、安価に入手できるグリシンとから微生物酵素法によってL-セリンを工業的に生産するとともに他の関連水酸化アミノ酸をも大量生産するための基礎を確立することを目的とする。本年度はL-セリンの生産と関連アミノ酸としてスレオニンの生産について検討したので以下に報告する。 L-セリン生産菌としてすでに見いだしているメタノール資化性細菌Hyphomicrobium methylovorumのセリン生産性をさらに増加させるためグリシン耐性変異株を取待した。その中の1株GN2は親株の1.4倍のセリン生産性を示した。このGM2株を用いてセリン生産のための至適反応条件を検討した結果、30℃で3日間の反応によってL-セリン34mg/ml生成した(対グリシン転換率24%、親株の1.5倍)。親株とGM2株との酵素活性の比較の結果、L-セリン生産に関与するメタノールデヒドロゲナーゼとセリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ(SHMT)の両酵素活性がGM2株では1.5〜2倍高かった。そこでセリン生産性を支配するSHMTをGM2株の無細胞抽出液より約130倍に精製し、微生物起源のSHMTとして初めて結晶状に単離した。精製酵素標品は電気泳動、超遠13的に単一で、分子量約47,000の同一サブユニット2個からなる分子量約95,000のタンパク質で、ホロ酵素はピリドキサルリン酸2個を含有していた。一方、エタノールとグリシンとからスレオニンを合成するメタノール資化性細菌Pseudomonns KM193を分離しスレオニン生産の至適反応条件を検討した結果、L-スレオニン0.3mg/ml,アロスレオニン1mg/ml生成した。
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