本研究は、アクリジン環の9位の置換基を変えることにより著しくその螢光が変化することを応用し新しい螢光分析システムを開発することを目的とする。 (1)N-(9-アクリジニル)マレイミド(NAM)とSeHとの新反応の開発:SeHがNAMと反応することを見い出し、ベンジルゼレノールとの螢光反応物を単離しその構造をIR、NMR、MASSによって決定し、SHと同様の反応機作であることを明らかにした。更に生体中酵素の活性部位に存在するゼレノシステインの新しい微量分析法を検討し、ピコモルレベルの高感度の分析法を開発した。又、-Se-Se-結合を電極法により-SeHに導く方法を開発し、ゼレノシスチンの分析へ応用した。 (2)酵素との組み合わせによる生理活性物質の分析への応用:メチオニン-γ-リアーゼはメチオニンからメチルメルカプタンを遊離する。これとNAMとを反応させることにより新しいメチオニンの定量法を見い出した。これによりピコモルレベルの定量が可能であった。同様にしてメチオニン-γ-リアーゼの活性測定法も開発した。 (3)リポ酸への応用:ビタミンの一種であるリポ酸について、その分子内-S-S-基を環元開裂させNAMと反応、発螢光させる新しい分析法を開発した。 (4)NAM合成法の改良:新しいNAMの合成の改良法として最終段階のマレイミド環への縮合を検討した。アミノアクリジンから調製されたN-(9-アクリジニル)マレアミン酸を超音波照射下、乾燥ベンゼン中シュウ酸クロリドと反応させた後、トリエチルアミンで処理し、シリカゲルクロマトグラフィーで精製するとAnalytical gradeのNAMがグラムオーダーの反応でも35%の収率で得られる改良合成法を開発した。
|