評価モデルの作製:新しく塑性破壊理論にもとづく上界定理を適用して、斜面方向の根(水平根)と鉛直方向の根(鉛直根)を同時に取り入れた理論モデルを作製した。このモデルでは根の効果は引抜強度で表現され、土の強度定数のうちの粘着力の増加として働くとした。 モデルパラメターの決定:モデルのパラメターを次の方法で測定を開始した。イ)根系域内表層土の力学強度定数の測定:最近試作された円井式現場一面剪断試験機により古生層と新第三紀層斜面の表層土の剪断強度を測定し、飽和時と不飽和時のc、φの平均値と分散範囲を決定した。ロ)すべり面上での根量の推定:根を水平根と鉛直根に分けて表土層厚と根の伸長状態により斜面を4タイプに分類した。次に根束逓減則と分岐則という新しい規則性を根に導入して、根株中心から任意距離の水平根と鉛直根の平均本数と平均直径が算出できるモデルを作製した。ハ)根の引抜抵抗力の測定:すべり面上で根は引抜抵抗力として崩壊に作用すると考え、根の直径と引抜抵抗力の関係をロードセルとストレンメターで計測し、回帰式で表現した。ニ)前記の根の平均直径と平均本数および引抜抵抗力を用いて、すべり面における水平根と鉛直根による粘着力の増加量が決定された。ホ)樹木伐採による根の腐朽と引抜抵抗力の減少:伐採年別に腐朽度を測定し、根の強度は伐採後2年間は伐採時と変らないが、以後直線的に減少し、15年で殆んど完全に強度が消失することが分った。引抜抵抗力も同様な過程をとると考えられる。 モデルによるシュミレーションの結果:崩壊地の形状、土層厚、傾斜角を各種に仮定し、関東地方スギ収獲表に前記パラメターの測定値を適用してモデルが適確に作動することを確認した。続いて、上記各種條件下においてスギ林令と共に斜面安全率がどのように変化するかにつき検討を行った。
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