新大・農学部付属村松苗畑にある野兎飼育場に於て、野兎の生態調査の一環としてマルチ・アンテナ法による行動追尾装置の開発に関する研究を進めてきた。すなわち、同時限に複数個体の行動を同時追尾する方法の開発である。複数個体にそれぞれ異なる周波数の発信機を装着し、場内に配置した45本のアンテナ群により得た情報をもとに、それぞれの個体の行動追尾を行ってきた。しかし、今までの方法ではデータ集積記録やシステム作動効率の上に支障が認められた。今回はこれらの支障を取り除くための主としてシステムの改良を行った。 1.システムの改良についてPC-9801VFを2台購入し、1台はコントローラでシステムの1部に組込み、他はデータ解析とシステムソフトの改良を行なっている。システムコントローラには、I/Oボード、GP-IBボード、A/D変換ボードを内蔵して、従来のシステムを大巾に改良した。さらに、データ記録もデータレコーダから、内蔵したフロッピイディスクに改良したため、システムの作動効率が向上し、1枚のデスケットに、1頭の行動につき理論上40時間のデータを集記録することが可能となった。 2.発信機の小型化については、半円ドーナツ型のブロック化の試作機を作製し、現場実験と装着実験を実施した。その結果、約12時間の発信継続時間と装着から破壊までの継続時間約8時間を得ている。 3.妨害電波実験では、新システムにおいて周波数198〜200KHz付近で、システムの稼動中にマイコン・デスプレーに電波障害が認められた。このため実験中は発信周波数の選択する必要が生じた。 4.受信アンテナ群の整備として、アンテナケーブル吊下げ位置を地上3mにかさ上げして設置した。これは冬期、積雪深の増大に伴い、野兎によるアンテナケーブルの食害を防止するため改善したものである。当年は豪雪であったがケーブル線の食害は最小限に止め得た。
|