研究概要 |
フェノール類の酸化カップリング反応を利用して, リグニン, タンニン系で非ホルマリン系の接着剤の開発を行った. (1)サルファイトパルプ廃液(SSL)を原料とするリグニン系接着剤:SSLが有するスルホン基のため, 未処理のSSLでは耐水性のの付与は困難である. しかし, 酸の添加あるいは陽イオン交換によってSSLを酸性化すると, 耐水性を付与できる. その場合, 酸化剤は, 酸と相乗的に働き不溶化反応を低温度側にシフトさせ, 更に不溶化成分生成割合も増大させる. 酸化剤をH_2O_2とした場合, 添加量は対SSL15%が良く, 130°Cまでに硬化反応は完了する. 未処置のSSLおよび硫酸添加SSLでは, 硬化樹脂中のOH基量の減少程度が小さいが, 陽イオン交換したSSLでは, OH基の減少が大きく耐水性が大きい. (2)ミモザタンニン(MT)を原料とするタンニン系接着剤:水抽出物である市販のMTは, SSLと比較して, 酸化剤との反応で, ある程度の耐水性を有する生成物を与える. 更に, 酸の添加やスルホン基の導入で酸性化したMTと酸化剤との反応では, 高耐水性の樹脂となる. MTを更に酢酸エチルなどで抽出して, カップリング反応に入らない糖などの不燃物を除くと, 耐水性能は向上する. 更に, この精製MTを塩素化すると, 60°C3日間の反応で, 2時間煮沸処理しても100%不溶の樹脂が得られた. K_2Cr_2O_7は, 他の酸化剤と異なり, 中性域で高耐水性の樹脂を与える. MTをアルカリーO_2酸化やヨウ素化した後, H_2O_2と反応させると, K_2Cr_2O_7と同じ中性のPH領域で高耐水性の樹脂を与える. (3)接着力試験:SSLやMTを原料とし, H_2O_2を酸化剤とする接着剤でパーティクルボードを製造した. 酸性化したSSLの場合, ユリア樹脂よりも耐水性は大きかった. MTの場合, 酸性化しない場合にはユリア樹脂程度, 酸性化するとフェノール樹脂以上の耐水性を有する接着剤となった. また, 予め木材表面を酸化剤で処理するとMT接着剤の接着力は一層改善された.
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