最初に有効性の高いワクチンを多量かつ簡便に作製するために、供試菌株の選択、保存法、培養条件および不活化法について検討した。まず、ワクチン株には強毒株を用いるほど高い有効性が得られるとされているので、ブリ稚魚に対する病原性試験を行って、供試菌株を選択した。強毒株の保存法はMist disccansを分散媒とした凍結乾燥法が最も良好であった。ワクチンの収量は供試菌株を培養温度が22.5〜30°C、培地pHが6.47〜7.24、塩分濃度が1.0〜2.0で24時間振とう培養し、ホルマリンで不活するのが良好であった。次に作製したワクチンを浸漬法により室内および野外においてブリに投与し、その有効性を検討した。その結果、いずれの飼育環境においても、ブリの血清中や体表粘液中の抗体価は浸漬処理1週間後には上昇をはじめ、3〜4週間後にはピークに達したが、それ以後は低下した。なお、抗体価の測定にはELISAを用いることによって、従来のマイクロタイター法よりも高感度に測定することができた。血清および体表粘液中に産生された抗体は、いずれもマクログロブリンであり、抗原的に共通であることがわかった。しかし、浸漬法のみの感染防御性は室内および野外のいずれにおいても、低い結果しか得られなかった。そこで、さらに有効性を高めるために2回浸漬法、経口法やレバミゾールとの併用投与について検討した。その結果、2回浸漬法においては血清および体表粘液中の抗体価が上昇し、経口法の併用においては腸管粘液中の抗体価が上昇した。そして、いずれの場合においても感染防御性が上昇し、有効性が高まった。しかし、レバミゾールの併用投与の有効性には変化がみられなかった。今回用いた各投与法の有効性では実用性が低いと思われるので、次年度においては、より有効性の高い抗原を検討するとともに、他法との併用による浸漬法ワクチンのブリ類結節症に対する有効性の向上をはかる必要があると思われる。
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