研究課題
免疫によるより有効性の高い感染防御法を検討するには、原因菌の侵入経路や発症要因を解明する必要がある。そこで、ワクチンの有効性を検討するまえに、本症原因菌の感染経路について調べた。その結果、マスキング法による局所攻撃ではブリの頭部および尾部のみを攻撃しても発症したことから、体表からの感染が考えられた。しかし、【^(14)C】標識生菌による攻撃では体表よりも鰓に高い放射活性が認められ、残存時間も長かったことから、本症原因菌は鰓への親和性が高く、主にそこから食細胞を介してブリ体内に侵入し、発病すると考えられた。そのため、これらの部位の抗体産生を刺激する浸漬法やスプレーワクチンが有効ではないかと考えられた。次に、生体内に侵入した病原菌の種々の生体防御因子に対する抵抗性、特にブリ血清の抗菌作用に対する本菌の抵抗性について検討した。その結果、抵抗性は強毒株のみに認められ、強毒株は血清の抗菌作用を阻害する物質を産生することも認められた。これらの血清抵抗性が本症原因菌の病原性に関与しているものと考えられた。前年度の実験では浸漬法ワクチンは投与法が簡便ではあるが、それ単独では室内および野外のいずれにおいても感染防御性は低かった。そこで、さらに有効性を高めるために、浸漬反復処理や抗原の種類について検討した。その結果、浸漬処理を2回、3回と増すにつれて、血清や体表粘液中の抗体産生量や感染防御性の上昇が認められた。また、抗原にはホルマリン死菌よりも粗LPSや破壊菌体を用いると有効性の上昇が認められた。この原因として、これらの抗原は全菌体と比較して分子量が小さく、短時間の浸漬処理により、魚体内に取り込まれる抗原量が多いからではないかと考えられた。本症原因菌は食細胞内での増殖性が強いと考えられたので、ワクチンの有効性を高めるためにはブリの細胞性免疫機構を活性化する抗原を検討する必要があると思われる。
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