研究概要 |
3箇年の研究をまとめると次のようになる. 細山田・柿田は, 本研究で開発したつり下げ型圧力スプレー式模擬降雨装置について, リザーバーの加圧力, ノズルにかかる電磁弁の開閉時間, 降雨強度, 雨滴落下速度, 雨滴径の関係を図表で示し, それぞれの場合について降雨エネルギーを算定した. 自然降雨の侵食性因子の算定については, 時間雨量から算定する簡便計算法と, 本来の短時間降雨から計算する方法との相関性がきわめて高いことを示した. 藤原らは, 雨滴落下速度をマルチストロボを用いて撮影し, 雨滴径と落下速度の関係を求め, Lawsの値と比較した. 単滴による飛散土量分布を求めるため, 水滴径, 土粒子, 湛水深を変化させ, 距離別の飛散土量分布および土粒子の射出角を測定し, 飛散分布型を推定した. 日下は, 従来から行ってきた自然降雨下の枠試験圃場における試験結果を用い, 表面流を用いた室内実験の結果と比較して, 土壌流亡量推算式の現地への適用を検討した. また, 降雨量〜表面流出量の関係を統計的に求め, 降雨量から土壌流亡量を直接計算できる推算式を求め, 降雨のエネルギーの効果を考慮するとかなり高い精度で土壌流亡量の推算が可能であることを見出した. 南らは, 非圧力式の雨滴発生器の特性をひきつづき調査し, 降雨量の場所的分布, 雨滴径の変動範囲を調査し, 降雨エネルギーの算定を行った. 翁長は沖縄のある強度の雨に対してエネルギーが高いことを示し, 沖縄の土壌特性(粒度, 土壌構造など)や作付体系を調査し, 土砂流亡の実態とそれへの対策についてまとめた. 塩月は, 10分雨量データから集中豪雨時の雨滴粒度分布を再現する方法により, 降雨エネルギー算定を試みた. その結果, 豪雨時の1時間以内前後での極値雨量強度曲線(RT曲線)はTallot型でよく表されること, 集中豪雨時の降雨エネルギーには雨滴の空間密度Noを基にした降雨エネルギー計算式が外挿できることを示した.
|