研究概要 |
肉用牛の屠肉形質とくに脂肪交雑の遺伝機構を解明するために、ホルスタイン種の中で脂肪交雑形質に関して優れた遺伝子をもつことが判明している種雄牛Aおよびこれと父方半兄弟の種雄牛B、母方半兄弟の種雄牛Cを雌牛群に計画的に交配して産子を得た。(以下その去勢牛3頭ずつをA,B,C群と略称する。)これら去勢子牛を同一環境ならびに飼養条件下で哺育・育成し肥育試験を実施した。 A,B,C群は7か月齢でそれぞれの平均体重が258,253,257kgから肥育開始し、636,648,644kgの体重時に屠殺した。肥育期間の1日当たり増体量は0.98,0.94,0.89kgであり、全般的にホルスタイン種去勢牛としてはやや低い増体速度であった。3群の枝肉重量は、364,376,379kgであり、これらの枝肉の組織分離によって得られた枝肉中の分離脂肪の割合は、34.1,31.3,32.2%であった。また、第5胸椎から第6腰椎までの15切断面で判定した脂肪交雑評点の平均値は3群でそれぞれ【2.0^+】,【2.0^+】,2.0であり、ホルスタイン去勢牛の平均的な評点水準よりいずれも高い値であった。以上の結果から各種雄牛の産子は発育成績および屠肉成績の両方において極めて類似した値を示しており、脂肪交雑形質に関する種雄牛Aの優れた遺伝子はその父母両方から由来して相加的な効果がAに現れたものと考えられた。しかし、種雄牛Aの産子には脂肪交雑に関して対照的な2つのグループの存在が假定されるので、さらに昭和61年度にはA群の例数を追加すると同時に2つの発育段階で屠殺することにより、脂肪交雑発現の時期についても確かめる予定である。 第6,8,11胸椎部および第3腰椎部の切断前面の写真を撮映し、この写真をもとに画像解析法により、枝肉構成の推定、脂肪交雑評点の客観的評価の可能性を検討中である。
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