研究概要 |
本研究はマレック病(MD)のワクチンブレイクに対抗しうる有効なワクチンの開発を最終目標としている。以下に得られた成績を述べる。 1)MDウイルス(MDV)・七面鳥ヘルペスウイルス(HVT)のウイルス群は血清型として3型に分類されている。それぞれの血清型に特異的な単クローン性抗体が班員により樹立され、これら抗体を用いることにより野外分離ウイルス株の同定が容易になった。そのうち,MDV1型特異抗原と反応する抗体の一種はMDリンパ腫由来株化細胞やMDリンパ腫細胞中のリン酸化蛋白を認識するものであり、今後MD腫瘍細胞の同定にも有用と思われた。また、これら株化細胞やリンパ腫細胞には腫瘍抗原の一種としてHD抗原が発現されているが、その抗原決定基はNグリコリルノイラミン酸であり、含有量は全シアル酸の1.2%の割合であった。 2)腫瘍原性の程度ならびに血清型の異なるMDV・HVTのDNAを用いてDNA制限酵素切断パターンをアガローズ電気泳動で比較したところ、各血清型に特異的なパターンを示した。また、血清型1の造腫瘍原性MDV株と非造腫瘍原性MDV株のDNA間で倒置反復配列内にDNA構造上の相違が見い出された。 3)MDワクチンブレイクの発生をみたウズラ群から4種のMDVが分離され、これらウイルスは鶏に対して強い腫瘍原性を示した。同様にニワトリ群からも5種のウイルスが分離された。 4)MDワクチンブレイク発生鶏群を実験区として定めて、飼育鶏の羽髄におけるMD病変の形成時期、程度、特徴とMD発生の相互関係を調べたところ、MD発病鶏では持続的に腫瘍病変を形成するのに対して、健康経過鶏では反応性病変が形成されることが明らかとなった。
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