本研究は、骨格筋収縮制御機構の素過程を特異的に促進あるいは抑制する薬物を、未熟練の技術補助者でも系統的にスクリーニングできる方法を確立することを目的としている。今年度の報告では、紙面の制約もあるので、設備備品費が重点的に使用されたスキンドファイバーによる筋小胞体実験のための自動溶液交換装置の開発について経過報告を行いたい。 容積0.6mlの実験槽に斜め上方から張力トランスデューサーに接続した標本を挿入し、実体顕微鏡(ニコンSMZ-10)に取り付けたテレビモニターで監視することができるようにした。循環恒温器(ネスラブRTE5 z)を用いて実験槽周囲を定温の水で潅流し、槽内の温度を一定に保った。標本の浸っている溶液を迅速に交換するため、実験槽内の溶液を一旦吸い取ってから新しい溶液を注入する方法を採用した。実験液は1気圧に加圧したビンに入れ、電磁弁を介して実験槽に連結した。このような加圧ビンと電磁弁は15対並列に接続されているので、どの弁に通電するかによって、15種のうちから任意の溶液を実験槽に注入できる。また、実験槽は別の電磁弁を介して吸引ポンプにも接続されているので、新しい溶液が注入される直前にこの電磁弁に通電して実験槽を空にすることができる。電磁弁は、電気刺激装置(日本光電SEN-3201)でタイミングをとり、自作の回路で駆動した。マイクロコンピューター(日本電気PC-98XA)に予めプログラムされたパルスを発生させることにより、電磁弁駆動回路を制御し、任意のプロトコールの実験が行えるようにした。張力データは、ペンレコーダー(グラフテクSR6221)に描画するとともに、コンピューターに実装したアナログ・ディジタル変換器を用いて収集し、張力*時間積などの解析が行える。この装置を試みに生検筋標本の筋小胞体機能の検査に用いたところ、十分実用に供せられることが分かった。
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