研究課題/領域番号 |
60870010
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤原 元始 京大, 医学部, 教授 (90025536)
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研究分担者 |
岡本 新一郎 京都大学, 医学部, 助手 (40160717)
三輪 聡一 京都大学, 医学部, 助手 (40157706)
成宮 周 京都大学, 医学部, 助手 (70144350)
谷口 隆之 京都大学, 医学部, 助手 (10111957)
倉橋 和義 京都大学, 医学部, 講師 (10025653)
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キーワード | 脳血管攣縮 / クモ膜下出血 / 内皮細胞依存性収縮因子 / TX【A_2】様物質 |
研究概要 |
先に、私達はイヌ脳血管が内皮細胞依存性の収縮反応をひきおこし、その内皮細胞由来の収縮性物質が、thromboxane【A_2】(TX【A_2】)様物質であろうことを報告してきた。臨床において、クモ膜下出血後に、しばしば脳血管の攣縮が発現することが知られている。そこで、本研究の目的は、クモ膜下出血時の脳脊髄液が脳血管内皮細胞を活性化するかどうかを検討し、脳血管攣縮発現に内皮細胞の関与があるかどうかを明らかにすることにある。 クモ膜下出血患者より得た血液の混じる脳脊髄液を凍結乾燥し試料とした。一方対照脳脊髄液試料として術後得られた澄明な脳脊髄液を用いた。イヌ摘出脳血管において、クモ膜下出血脳脊髄液試料は、内皮依存性の脳血管収縮反応をひきおこした。対照脳脊髄液は、殆んど収縮反応をひきおこさなかった。溶血上清は、クモ膜下出血脳脊髄液と同様に内皮依存性の収縮反応をひきおこした。血液それ自身は、脳血管を収縮させたが、内皮細胞に依存しなかった。これらの結果は、クモ膜下出血時の脳脊髄液中および溶血上清中に脳血管内皮細胞活性化物質が存在することを示している。次に、これら2つの試料による内皮細胞依存性収縮反応について検討した結果、いずれもTX【A_2】様物質によることが示された。内皮細胞依存性収縮反応にアラキドン酸代謝産物の関与が示されたことから、アラキドン酸自身の脳血管反応を検討した結果、アラキドン酸収縮も内皮細胞依存性であった。さらに、脳,冠,腸間膜,伏在動脈からのTX【A_2】の安定な代謝産物であるTX【B_2】の流出量を検討した結果、脳動脈標本からの流出量は、他の動脈に比し、約10倍高かった。 以上の結果より、クモ膜下出血患者の脳脊髄液中には、内皮細胞活性化因子が含有され同因子より活性化された内皮細胞はTX【A_2】様物質を放出し脳血管を収縮させることが明らかとなり、ヒト脳血管攣縮発現に内皮細胞活性化が関与する可能性が示された。
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